「データで解く新司法試験択一 公法編」簡易版 はしがき

お世話になります。刑裁サイ太(平成20年度新司法試験合格・弁護士)です。何気に新年一発目の更新ですが、年始の挨拶とかどうでもいいですよね(喪中)。


さて、先日のコミックマーケット85で配布した「データで解く新司法試験択一 公法編」。
2時間ほどで適当に書いた学生レベルのレポートだったのですが、思いの外、ロー生を中心に反響が大きかったようです。
余る前提で80部持参しましたが完売となりました。お手に取っていただけなかった方も結構いたように記憶しております。
会場まで来たのに買えなかった方、また、年末年始も関係なく勉学に励むロー生(コミケに来たロー生は・・・?)へのちょっと遅めのお年玉ということで、「データで解く新司法試験択一 公法編」の簡易版をここに公開したいと思います。

はじめに

  本稿は,新司法試験(正確には「司法試験」と呼ぶべきであるが,旧司法試験との対比のために敢えて「新司法試験」と呼称する。以下同じ。)の択一式試験(正確には「短答式試験」と呼ぶべきであるが,一般的な呼称である「択一」と呼称する。以下同じ。)の傾向を分析しようというものである。
  傾向といっても,「●●の分野からの出題がここ数年ないので来年辺り出題されそう。」などというような出題傾向を分析するものではない。標題のとおり,「データ」を分析することによって,高得点を取るための情報が得られないかという観点の「傾向」を論じるものである。
  具体的には,公法系の問題によく見られる,

憲法●●条に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

という、通称「1/2問題」の正答の傾向を分析することがメインとなる。
  筆者は受験業界から離れて久しく,このような分析が既に予備校によってやり尽くされているかどうかは判然としないが,せっかく調べたということもあり,ここに公表することとしたい。
  もっとも,本稿には誤りがある可能性もあり,そのことを承知の上で読んでいただきたい。
  配布版では出現パターンを全て挙げているが、本稿では省略する。

総論

  この「1/2問題」であるが、難易度が高いのだろうか、出題形式に変遷が見られる。
1 平成18年〜平成19年
憲法行政法ともに、4つの記述が出題され、3問正解で部分点1点、4問正解で3点であった。
2 平成20年
憲法では、3つの記述が出題され、1問正解につき1点。
行政法では、4つの記述が出題され、3問正解で部分点2点、4問正解で3点(なお、一部の問題では2問正解で部分点1点)。
3 平成21年度以降
憲法では、3つの記述が出題され、2問正解で部分点1点。
行政法では、4つの記述が出題され、3問正解で部分点2点(ただし、1度だけ3つの記述で出題されたことがある。平成22年度29問)。
問題数はそれまでマチマチであったが、憲法10問、行政法9〜10問で統一された。

考察

ぞろ目パターン(111、222、1111、2222)の出現率は異常に低い。

  ぞろ目パターンは、新司法試験開始以来、たったの2回しか登場していない。しかもそのうちの1回は、通常4つ出題が原則の行政法で唯一3つ出題のレアケースで登場(平成22年度)。もう1回も、現在とは出題形式が異なる平成19年度に登場したものである。
  裏を返せばレアケース・出題形式違いではない普通の問題では1度も登場していないということになる。
  それらの事情を度外視しても、確率的に違和感が否めない。これまで「1/2問題」は合計146問出題されている。そのうち、ぞろ目はたった2回しか登場しておらず、登場率は1.37%程度となっている。
  3つ出題の場合は、2^3=8通りのうち、111,222の2通りがぞろ目となるから、登場率は2/8=25%程度となる。4つ出題の場合は同様に、12.5%(2/16)となる。それらから比べるとぞろ目登場率が異常に低いことが分かりやすい。
  そう考えると,「同じ数字の連続が正答になる」ということは,少なくともあと数年(または本稿が試験委員の目に入って対策を取られるまで)は,あり得ないと考えても差し支えないのではなかろうか。
  その考察を応用すると,たとえば,あと1つの記述の正誤が分からないという状況において,それ以外の選択肢が「111・」や「2・2」などであったとすれば,かなり高い確率で同じ数字が入らないことが分かる。
追記:同じ数字の連続は受験生心理的に、「あり得ない」と思ってしまうのが人情である。そういった思考に至らないために試験委員があえてそういう出題を外しているのではないかと考えている。

同じパターンの連続はよくある。
登場パターン数が少ないケースもよくある。

  同じパターンの連続、たとえば2問続けて「1212」が正答となるような並びは、個別に指摘するまでもなく頻繁に見られた。
  また、たとえば平成21年度の憲法では、1/2問題が10問あるところ、正答のパターンがわずか4通りしかなかった。これなども解いていて不安感が出てくるが、新司法試験択一公法ではよくあることである。

行政法の正答パターンはトリッキー。

  正答被りがほぼなくバラバラであったり(平成21年度),「1・・・」で始まるパターンが1つしかなかったり(このようなパターンになる確率は1.76%である。平成22年度),「12・・」で始まるパターンが数年出題されない一方(平成22年以降),その次に「12・・」が出題された年は10問中6問が「12・・」であったりと,行政法においては非常にトリッキーな傾向が目立つ。

分析

  得られたデータを元に、出題形式がほぼ固まった平成21年度以降について、登場パターンを集計して分析してみた。
憲法
50問中 (111と222を除外した期待値は50×1/6=8.33回)
 112 11回(22%)←9回
 121  7回(14%)←4回
 122  9回(18%)←8回
 211 10回(20%)←9回
 212  9回(18%)←7回
 221  4回( 8%)←3回
  221が異常に少なく,112と211がやや多い結果となった。
  右に付した「←○回」は,平成24年度までの回数を示している。4回とやや少なかった「121」にテコ入れが入っていることが伺われ,平成26年度以降に「221」へのテコ入れが行われる可能性が高いことを示唆する。


行政法
46問中(1111と2222を除外した期待値46×1/14=3.29回)
 1112 4回(8.70%)
 1121 4回(8.70%)
 1122 2回(4.35%)
 1211 1回(2.17%)←0回
 1212 4回(8.70%)←1回
 1221 1回(2.17%)←0回
 1222 2回(4.35%)←1回
 2111 2回(4.35%)
 2112 3回(6.52%)←1回
 2121 4回(8.70%)←3回
 2122 2回(4.35%)
 2211 7回(15.2%)←6回
 2212 6回(13.0%)
 2221 4回(8.70%)
  2211と2212が突出しているほかは概ね期待値どおりといえよう。
  右に付した「←○回」は,前同様に平成24年度までの回数を示している。これを見ると,平成25年度で未登場のパターンの帳尻合わせ・テコ入れをしていることがよく分かる。引き続き,調整局面ということで,登場回数が極端に少ない「1211」「1221」あたりを中心に,帳尻合わせ・テコ入れが行われる可能性がある。

まとめ

  一見すると均等に出題されていると思われた1/2問題も、分析すると様々な情報が出てくる。これらの情報を元に、新司法試験の択一の突破への足がかりとして欲しい。
  間違っても、Twitterにのめり込み、ようやく手に入れた「大嘘判例八百選」を自習室・キャレル等で読み耽ることのないように。
  なお、本稿は、筆者がほぼ校正もせずにノリで書いているものであり、誤りが存在する可能性は高い。本稿を鵜呑みにして新司法試験に不合格となっても、新司法試験に合格したのに全然モテなかったとしても、筆者は一切関知しないので、その旨あしからず。
                                                           以 上